みんなで考える市⺠公開講座シリーズ

「⽪膚の病気 患者さんの笑顔のために」
記録集
第1回
皮膚の病気の患者さんが
受ける誤解
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日時:2021年9月26日(日) 13:00~14:00
主催:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
後援:一般社団法人 INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会/NPO法人 東京乾癬の会 P-PAT/
認定NPO法人 日本アレルギー友の会
皮膚の病気の患者さんが受ける誤解
~患者の立場から~
丸山 恵理 さん(認定NPO法人 日本アレルギー友の会 副理事長)
アトピー性皮膚炎患者としての経験
認定NPO法人日本アレルギー友の会は、1969年2月に設立されたアレルギー疾患の患者会で、現在の会員数は約1,300名に上ります。約60名の専門医のご協力のもと、全国の患者さんに根拠に基づいた情報提供、療養相談を行っています。
私自身も、生後3カ月から現在まで続くアトピー性皮膚炎患者です。とくに10代後半は全身がかき傷だらけで赤く腫れ上がり、四六時中かゆみと痛みに悩まされる日々を送りました。就職後も、軽快と悪化を繰り返しており、皮疹が消えたことはありませんが今は日常生活に支障がない程度にコントロールができています。
ただ、小学校時代は見た目が原因で距離を置かれたり、社会人になって通勤電車で隣の人に避けられたこともありました。初対面の人に、いきなり「どうしたの、その顔」と言われたこともあります。自分の皮膚を恥ずかしく思い、劣等感を抱いたこともありましたが、そのような経験は多くのアトピー性皮膚炎患者に共通するところだと思います。
アトピー性皮膚炎の身体面、
精神面の辛さ
ここで、アトピー性皮膚炎の辛さについて、当会の機関紙『あおぞら』で企画したアンケート調査の結果からご紹介します。
アトピー性皮膚炎でもっとも辛いのは、かゆみです。実際、「身体面で辛いこと」の設問では、「永遠に続くかと思う皮膚の深いところからのかゆみ」の回答が最多でした。掻きたい衝動を抑えられず、掻き傷から血や浸出液が出て、痛みも伴います。こうしたかゆみにより十分な睡眠が取れなくなり、勉強や仕事に集中できないこともあります。
また、「精神面で辛いこと」(図3)の設問では、「他人の視線」の回答が最多でした。皮疹や傷だらけの顔や体を見られるのはとても辛く、それにより自分に自信が持てなくなります。
また、アトピー性皮膚炎は慢性疾患であるため、基本的に外用剤を塗り続ける必要があります。これが毎日となると大変で、軽快と悪化を繰り返すため、どうせ悪化するなら適当に塗って良いだろうと、治療意欲が薄れることもあります。
その他にも、「生活環境を整えても悪化する」「周囲の理解が得られない」「周りから掻くなと言われるストレス」「掻いてしまう自分を責める」など、精神面でさまざまな辛さがあることが浮き彫りとなっています。
横にスライドするとご覧いただけます。
精神面でつらいこと(認定NPO法人 日本アレルギー友の会アンケートより)
アトピー性皮膚炎との
上手な向き合い方
アトピー性皮膚炎は身体面、精神面にさまざまな辛さを伴いやすく、日常生活面にも支障をもたらします。このような病気とどのように向き合うと良いかについて、私自身の体験も踏まえ、当会の療養相談でアドバイスしている内容をご紹介します。
まず、精神面で辛いこととしてもっとも多かった「他人の視線」ですが、とくに若い世代はそのような傾向が強いと思います。10代、20代の頃はどうしても外見が気になるでしょう。でも、社会でさまざまな成功体験を積むに従い、内面に自信がつき、他人の視線も気にならなくなっていきます。
当会には、いつも明るく、チャレンジ精神に満ちあふれている患者さんがいますが、その姿は魅力的で、皮疹よりも考え方や言動に注目するようになります。つまり、皮疹の状態がどうであるかより、どんな人であるかの方が大切だと思うのです。
そして、できれば考え方を前向きにしてみることです。たとえば、「毎日薬を塗らないと生きていけない」を、「毎日薬を塗るだけで普通に生きることができる」と考えてみるのはどうでしょうか。
そして、「アトピーがあるからできないことばかり」と嘆いていても、状況は変わりません。まずは目標を持ち、そこに向かって努力を積み重ねてみて下さい。「アトピーさえなければもっと幸せに生きられたのに」と嘆く患者さんもいます。確かに私自身、アトピーで失ったものは数多くあります。それでも、ささやかでも良いので日々の生活に幸せを見い出すことで、喜びの多い人生へと変わっていったように思います。
正しい情報入手や受診のコツ
次に、今まさにアトピー性皮膚炎で悩んでいる方に、正しい情報を入手することの重要性をお伝えしたいと思います。まず、今の世の中、アトピー性皮膚炎に関する情報を入手することはそう難しくありませんが、その中には誤った情報も多く含まれています。
インターネットやSNSの情報を鵜呑みにして、独自のケアにこだわる人もいますが、そのことが結果として、患者さんの皮膚のダメージを大きくしてしまう懸念もあります。
医学的に根拠のある情報を手に入れ、正しい知識を持ち続けることは、アトピー性皮膚炎患者さんの症状を左右しかねない、重要な事柄です。きれいな肌になり、充実した人生を送るためにも、ぜひ正しい知識の重要性について認識して欲しいと思います。
また、受診の仕方も大切です。当会の会員の中には、「気になることがあっても、医師に質問しない」「皮膚は見せずに薬を処方してもらうだけ」という患者さんがいます。もし先生が忙しそうで気後れしてしまう場合は、気になることをあらかじめメモに簡潔にまとめておくと良いでしょう。そして、診察の際は必ず症状のある部位を医師に見せ、症状を把握してもらった上で、あらためて塗る場所、回数、量、期間を確認することをお勧めします。
受診は、正しい知識を得るために絶好の機会です。気になること、分からないことは受診時に解決して、アトピー性皮膚炎への理解を深め、納得して治療を受けることが大切です。
最後に~患者さんへのメッセージ
本日は、誤解されやすい病気であるアトピー性皮膚炎との向き合い方について、長年の患者である私の経験も踏まえてお話しました。
最後に私から、今アトピー性皮膚炎で悩んでいる方に、ぜひお伝えしたいことがあります。アトピー性皮膚炎で辛いことはたくさんあります。でも、皮膚を見て悲しんでも、悩んでも、何も変わりません。治療を頑張って症状を改善する、日常生活で幸せを見つける、人生の目標を見つける、何でも良いので、まずは自分から行動を起こしてみませんか。
自分自身が変わることで、新しい世界が見えるかもしれません。他人と比べて嘆き悲しむのではなく、自分らしい生き方をするため、一歩踏み出してみると良いでしょう。それにより、あらたな発見や希望に出会い、アトピー性皮膚炎患者であっても充実した人生が送れることを期待したいと思います。
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質疑応答
周囲とのコミュニケーションや正しい情報を得る方法
など、

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